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刑の種類と行政処分

昨今,なかなか世の中が物騒になってまいりました。

彼ら彼女らにも被害者としての側面はあるのでしょうが,いずれにせよ長期の刑に服することを免れるすべはないでしょう。

さて,刑にはどのような種類があるのでしょうか。罰金刑,懲役刑のほかに死刑があることはみなさんご承知のとおりかと思われます。

講学上の話をするならば,主刑と附加刑というものがあります。主刑は「財産刑」,「自由刑」のほか「生命刑」に分類されます。財産刑は財産を,自由刑は自由を,生命刑は生命を奪う刑罰です。

財産刑としては「罰金」(刑法15条),「科料」(17条,「かりょう」または「とがりょう」と読みます)があります。罰金や科料を納付することができない場合には換刑処分として「労役場留置」(18条1項,同2項)があります。これも刑罰に含まれます。

自由刑としては「懲役」(12条),「禁錮」(13条)のほか「拘留」(16条,「こうりゅう」または「てこうりゅう」と読みます)。懲役と禁錮は2025年に「拘禁刑」に統合される見通しです。

生命刑は「死刑」(11条)のみです。

附加刑は「没収」(19条,「ぼっしゅう」と読みます)があります。没収ができないときは「追徴」(19条の2)ができます。

なお,厳密な話をするならば,没収は刑罰ではなく行政処分です。没収には「触法行為組成物の没収」(少年法24条の2)もあります。

また,保釈条件違反に対する制裁としての「保釈保証金の没取」(刑事訴訟法96条2項,同3項,「ぼっしゅ」または「ぼっとり」と読みます)もありますが,刑罰ではありません。

注意すべきは「過料」(各法令や自治体条例などに規定あり,「かりょう」または「あやまちりょう」と読みます)が刑罰でなく民事罰であることです。納付しないからといって換刑処分としての労役場留置はできず,債権債務の問題となります。

実は,刑罰に似ているけれど刑罰でないものは他にもあります。公職に就く資格を制限する規定(国家公務員法38条,地方公務員法16条のほか学校教育法9条)が典型的です。

また,いわゆる公民権停止として知られる「選挙犯罪による処刑者に対する選挙権及び被選挙権の停止」(公職選挙法252条)といった規定もありますが,これも刑罰とは性格を異にするものです。

「逮捕」(刑事訴訟法199条以下)は刑罰ではありません。もっとも,巷の人々は逮捕を刑罰の一種であるかのように考えているようです。

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「住所」とは何か

「住所」は「引っ越したので新しい住所は…」のように使われることが多いのですが,この場合には住宅の位置を指定する座標としての意味が強いと考えられます。

他方,地方自治体選挙における有権者が投票を行うに際しては,住宅の位置としての「住所」では問題が生ずるため「引き続き三箇月以上市町村の区域内に住所を有する者(公職選挙法9条2項)」といった規定があります。

同様の問題は納税の場面でも生じ得るため「道府県内に住所を有する個人(地方税法24条1項1号)」のような規定もあります。

いずれも,単なる住宅の位置を指定する「住所」ではなく,人間の所在を問題にしていることは明白です。

判例は,①「反対の解釈をすべき特段の事情のない限り,その住所とは各人の生活の本拠を指す」(最大判昭和29・10・29,民集8巻10号1907頁),②「その人の生活にもっとも関係の深い一般的生活,全生活の中心」(最判昭和35・3・22,民集14巻4号551頁)としています。

上記の判例は,いずれも選挙権に関するものですが,租税に関する実務でも同様の判断がなされているようです。