「住所」は「引っ越したので新しい住所は…」のように使われることが多いのですが,この場合には住宅の位置を指定する座標としての意味が強いと考えられます。
他方,地方自治体選挙における有権者が投票を行うに際しては,住宅の位置としての「住所」では問題が生ずるため「引き続き三箇月以上市町村の区域内に住所を有する者(公職選挙法9条2項)」といった規定があります。
同様の問題は納税の場面でも生じ得るため「道府県内に住所を有する個人(地方税法24条1項1号)」のような規定もあります。
いずれも,単なる住宅の位置を指定する「住所」ではなく,人間の所在を問題にしていることは明白です。
判例は,①「反対の解釈をすべき特段の事情のない限り,その住所とは各人の生活の本拠を指す」(最大判昭和29・10・29,民集8巻10号1907頁),②「その人の生活にもっとも関係の深い一般的生活,全生活の中心」(最判昭和35・3・22,民集14巻4号551頁)としています。
上記の判例は,いずれも選挙権に関するものですが,租税に関する実務でも同様の判断がなされているようです。