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一定の手続きにより万人にアクセス可能な情報の転載と不法行為

新しい人権として「知る権利」というものがあり,表現の自由(憲法21条1項)から導かれるものとされています。

判例通説ともに「知る権利」は認められており,その性格は次の2通りに大別されると考えられています。

①表現の自由に対して反射的に表現を受け取る自由が存在するとの考えに基づく妨害排除請求権(自由権)としての性格。

②政府の有する情報の公開を求めることで国民が国政に関与するにつき重要な判断の資料を得る権利(最大判昭和44・11・26,刑集23巻11号1490頁)すなわち参政権に絡んだ請求権もしくは社会権的性格。

わが国においては,「目黒区駒場8丁目の団体職員生研太郎容疑者(49)がカルタヘナ法違反の疑いで逮捕され~」などとプライバシーを丸裸にする実名報道が一般的ですが,諸外国ではフルネームが報じられることはほぼありません。

表現の自由が極めて強いとされている米国でも,社会的影響が大きい事件のほか実名報道はなされていません。

インターネット上はどうでしょうか。ツイッターや5chなどといった,反社会的性格の強い人物が集うSNSでは,他人の個人情報を暴露することを生業としているケースも見受けられます。

インターネット上で「炎上」した人物について,実名や住所を暴いてやろうといったことは,かつて盛んにみられたものの,刑事事件化することが増え,昨今ではあまりみられなくなりました。

現在でも問題となるのが,裁判書(さいばんがき)や登記簿の公表です。これらを公開する人物は「公開情報で万人に閲覧可能なのだから違法でない。」と主張をすることは珍しくありません。

東京地裁平成25・2・27は,不動産管理会社の従業員が,マンション管理組合の役員を退任させる目的で,登記簿を取得し,これを他の管理組合役員に開示したことにつき,プライバシーの侵害にあたるとされた事例です。

本件では,登記簿に仮差押えの登記が混じっていたこともプライバシー侵害の認定上重要であったと考えられますが,銀行や信用保証会社からの登記、住所氏名も,インターネット上での公開となれば,例外なく不法行為責任を問われることになるでしょう。

裁判書については言わずもがなです。勝訴であれ敗訴であれ,裁判に関与したこと自体が「負の評価」となるのは当然であり,「●●氏が裁判沙汰に」程度の情報であっても不法行為責任を問われることは必至です。

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「住所」とは何か

「住所」は「引っ越したので新しい住所は…」のように使われることが多いのですが,この場合には住宅の位置を指定する座標としての意味が強いと考えられます。

他方,地方自治体選挙における有権者が投票を行うに際しては,住宅の位置としての「住所」では問題が生ずるため「引き続き三箇月以上市町村の区域内に住所を有する者(公職選挙法9条2項)」といった規定があります。

同様の問題は納税の場面でも生じ得るため「道府県内に住所を有する個人(地方税法24条1項1号)」のような規定もあります。

いずれも,単なる住宅の位置を指定する「住所」ではなく,人間の所在を問題にしていることは明白です。

判例は,①「反対の解釈をすべき特段の事情のない限り,その住所とは各人の生活の本拠を指す」(最大判昭和29・10・29,民集8巻10号1907頁),②「その人の生活にもっとも関係の深い一般的生活,全生活の中心」(最判昭和35・3・22,民集14巻4号551頁)としています。

上記の判例は,いずれも選挙権に関するものですが,租税に関する実務でも同様の判断がなされているようです。