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[技術資料]完成品と毒劇法による規制

 毒物及び劇物取締法には、「毒物又は劇物の販売業の登録を受けた者でなければ、毒物又は劇物を販売し、授与し、又は販売若しくは授与の目的で貯蔵し、運搬し、若しくは陳列してはならない(第3条3項本文)」という規定があります。

「毒物」の一覧である同法別表第一の15号には「水銀」が指定されています。
ご存じのとおり、水銀はとても毒性の強い物質です。

 ここでインターネット上のオークションサイトなどをみていただくと、今でも個人や古物商が水銀体温計などを販売していることがわかります。

水銀は、水銀体温計のみならず、風力発電機(ロータリーコネクタ)や回転ターゲット式X線管、水銀スイッチ、水銀リレー、蛍光灯、高圧水銀ランプなど、多くの製品(完成品)に使用されています。

これらを取扱う事業者のほとんどは「毒物又は劇物の販売業の登録を受けた者」ではありません。

彼らはなぜ処罰されないのでしょうか。

厚生労働省の資料「毒物及び劇物取締法Q&A」によれば、

・毒物及び劇物取締法別表、毒物及び劇物指定令において物質名のみが記されている場合(例:水銀、トルエン、無機○○塩類など)は、原体が取締対象になります(毒物劇物の該当性に関すること、問2-3)。

・原体とは、原則として製剤化していない化学的純品を指す(毒物劇物の該当性に関すること、問2-3)

・以下の概念を満たすものを「製剤」とみなしています(毒物劇物の該当性に関すること、問2-4)。
【製剤】
(1)薬剤又はこれに類するもので、物質的機能を利用するもの
(2)希釈、混合、粉砕、ろ過等を含む調整行為が加えられたもの
(3)当該成分を利用する意図をもって調整されたもの
【製剤ではないもの】
(1)器具、機器、用具といった概念でとらえられるもの
(2)使用済みの廃液等、廃棄されたもの
(3)毒物又は劇物を不純物として含有しているもの

・製剤に当たらない例:水銀体温計、自動車用バッテリー、劇物たる塗料で塗装された器具、機器類(毒物劇物の該当性に関すること、問2-4)

・合金、固溶体は混合物(製剤)です(毒物劇物の該当性に関すること、問2-10)。

・毒物又は劇物たる成分を含有していたとしても、当該成分が製造過程等に由来する不純物として存在する場合は、毒物又は劇物の対象物とはみなしません。(毒物劇物の該当性に関すること、問2-13)。

※出典は、「毒物及び劇物取締法Q&A」https://www.nihs.go.jp/mhlw/chemical/doku/situmon/qa.pdf

とあり、器具に封入されたものは規制対象外のようです。
別表に化学名が記載された物質について、その化学名の物質(原体)のみが規制の対象となることはよく理解できますが、
器具、機器、用具に含まれる物質が製剤でないとする法的根拠は不明です。
ひとまず規制省庁の解釈(指導)として受け取るべきでしょう。